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三角関数の逆関数

\( y={x}^{2} \) の逆関数は \( y=\pm \sqrt{x} \) ,  \( y=\log x \) の逆関数は \( y={e}^{x} \). では, 三角関数の逆関数は?

\( y=\sin x, \;y=\cos x, \;y=\tan x \) などの \( y \) の値から \( x \) を求めることは \( \displaystyle\frac{\pi }{\mathrm{3}}, \frac{\pi }{4} \) などのよく知られた角ならばできますが, 一般の角については \( x \) を求めるような式 \( x=f\left(y\right) \) がどうも簡単には思いつきません. 今回はこのあたりを探ってみたいと思います.

*1対1対応のための定義域とか複素数の積分とかいろいろ注意する必要はありますが流れを止めたくないので細かいことは気にせず書きます.

■逆関数とは

簡単には \( y=f\left(x\right) \) \( x \) \( y \) を入れ替えて \( y \) について解いたもののことです.

図形的には \( y=x \) に関して対称なグラフになります.

(例1) \( y={x}^{2} \)

\( x \) \( y \) を入れ替えて \( x={y}^{2} \) . これを \( y \) について解いて \( y=\pm \sqrt{x} \) .

(例2) \( y=\log x \) (底は自然対数e)

\( x \) \( y \) を入れ替えて \( x=\log y \) . これを \( y \) について解いて \( y={e}^{x} \) .

\( \tan x \) の逆関数

\( y=\tan x \) の逆関数を求めましょう.

簡単です. \( x \) \( y \) を入れ替えて \( y \) について解けばいいのです.

ではまず \( x \) \( y \) を入れ替えて \( x=\tan y \) .

これを \( y \) について解いて・・・・ 解けませんね.

■微分してみる

\( y \) が求まらないとなると, 何か近いものはないでしょうか.

とりあえず微分すれば \( \displaystyle\frac{\mathit{dy}}{\mathit{dx}} \) (以下 \( y\text{'} \) )は出ますね.

何も分からないよりかはいいので, とりあえず微分してみましょう.

\( x=\tan y \) ・・・① の両辺を \( x \) で微分して, \( 1=\displaystyle\frac{1}{{\cos }^{2}y}\cdot y\text{'} \) .

これより \( y\text{'}={\cos }^{2}y \) .

三角関数の公式 \( 1+{\tan }^{2}y=\displaystyle\frac{1}{{\cos }^{2}y} \) から \( y\text{'}=\displaystyle\frac{1}{1+{\tan }^{2}y} \) .

①より \( y\text{'}=\displaystyle\frac{1}{1+{x}^{2}} \) .

\( y\text{'} \) が出ました. 少し前進した気分です.

■積分してみる

この \( y' \) を積分すれば \( y'' \) が求まるはず!

\[ y=\int \frac{1}{1+{x}^{2}} \ dx \]

置換積分で \( x=\tan \theta \) と置いて, \( dx=\displaystyle\frac{d\theta }{{\cos }^{2}\theta } \) , \(\displaystyle 1+{\tan }^{2}\theta =\frac{1}{{\cos }^{2}\theta } \) より

\begin{align*} \int \frac{1}{1+{x}^{2}} {dx} & =\int \frac{1}{1+{\tan }^{2}\theta }\cdot \frac{d\theta }{{\cos }^{2}\theta } \\ \displaystyle\int \frac{1}{1+{x}^{2}} dx & =\int \frac{1}{1}\cdot d\theta \\ \int \frac{1}{1+{x}^{2}}\mathit{dx} & =\int d\theta \\ \int \frac{1}{1+{x}^{2}}\mathit{dx} & =\theta . \end{align*}

(積分定数は省略)

あとは \( \theta \) をもとに戻すだけ!

\( x=\tan \theta \) だったから, これから \( \theta \) を求めて・・・・って \( y \) \( \theta \) に変わっただけで \( \theta \) を求めるにはまた同じ手順を繰り返さないといけないってことで, また振出しに戻っての繰り返しでいつまでたっても終わりません.

結局 \( \displaystyle y=\int \frac{1}{1+{x}^{2}}\mathit{dx} \) から何も進まなかったということになりました.

微分してから積分したので当たり前といえば当たり前なのですが.

■開き直る

ということで, \( y=\tan x \) の逆関数は \( \displaystyle y=\int \frac{1}{1+{x}^{2}} dx \) でいいのではないでしょうか?

しかし, 関数というからには \( x \) の値から \( y \) を求めたいところです.

今の場合は \( y=\tan x \) の逆関数ですから, 例えば \( x=\sqrt{3} \) ならば \( y=\displaystyle\frac{\pi}{3} \) というように \( \tan \) の値 \( x \) から角度 \( y \) を求めるという感じで.

ところが \( \displaystyle y=\int \frac{1}{1+{x}^{2}} dx \) \( x \) \( x=\sqrt{3} \) を代入しても \( y=\displaystyle\frac{1}{4}x \) になって, 期待した \( y=\displaystyle{\frac{\pi}{3}} \) はでてきません. 少し工夫が必要のようです.

結果に \( x \) が残っては困るので, 何らかの計算をした後 \( x \) を代入して数値にできればいいのですが.

ここで, いきなりですが, \( \displaystyle y={\int }_{0}^{x}\frac{1}{1+{t}^{2}} dt \) はどうでしょうか. これなら定積分した後 \( x \) を代入できて \( 0 \)は代入しても影響が出ません. しかも両辺を \( x \) で微分すると \( \displaystyle y'=\frac{1}{1+{x}^{2}} \) となって初めに微分したものと一致してなんだかよさそうです.

\( \displaystyle y={\int }_{0}^{x}\frac{1}{1+{t}^{2}} dt \) を, ためしに \( x=\sqrt{3} \) の場合で計算してみましょう.

\[ y={\int }_{0}^{\sqrt{3}}\frac{1}{1+{t}^{2}} dt \]

\( t=\tan \theta \) とおいて, \( \displaystyle dt =\frac{d\theta }{{\cos }^{2}\theta } \) で積分範囲は \( t \) | \( 0 \) → \( \sqrt{3} \) に対して \( \theta \) | \( 0 \) → \( \displaystyle\frac{\pi}{3} \) .

よって, \( \displaystyle y={\int }_{0}^{\frac{\pi }{3}}\frac{1}{1+{\tan }^{2}\theta }\cdot \frac{d\theta }{{\cos }^{2}\theta } \)

これは前にやったように

\[ y={\int }_{0}^{\frac{\pi }{3}}d\theta ={\left\lbrack \ \theta \ \right\rbrack }_{0}^{\frac{\pi }{3}}=\frac{\pi}{3} \]

たしかに \( x=\sqrt{3} \) のとき \( y=\displaystyle\frac{\pi }{3} \) となりました.

ということで \( \displaystyle y={\int }_{0}^{x}\frac{1}{1+{t}^{2}} dt \) \( y=\tan x \) の逆関数ということにしましょう.

しかしこれでは見にくいので \( \displaystyle{\int }_{0}^{x}\frac{1}{1+{t}^{2}} dt \) \( \arctan x \) と新しい名前をつけて三角関数っぽくしてみましょう. つまり \( y=\tan x \) の逆関数は \( \displaystyle\arctan x={\int }_{0}^{x}\frac{1}{1+{t}^{2}} dt \) です.

よく知られた角度ならば普通の \( \tan \) の計算を逆に考えればいいので積分計算は不要です.

(例)

\( \displaystyle\tan \frac{\pi }{4}=1 \) なので \( \displaystyle\arctan 1=\frac{\pi }{4} \) ,

\( \displaystyle\tan \frac{\pi }{6}=\frac{1}{\sqrt{3}} \) なので \( \displaystyle\arctan \frac{1}{\sqrt{3}}=\frac{\pi }{6} \) .

■まとめ

\( y=\tan x \) の逆関数は今までの式の表現では表せないようだ.

\( \displaystyle\arctan x={\int }_{0}^{x}\frac{1}{1+{t}^{2}} dt \) として \( y=\tan x \) の逆関数を \( y=\arctan x \) とする.

・積分形で \( \displaystyle y={\int }_{0}^{x}\frac{1}{1+{t}^{2}} dt \) のように表現できるが \( y \) を求めたいのであれば \( \tan \) の求め方を逆に考えればいいだけなので積分計算は必要ない.(よく知られた角については積分しなくても求まるし, 一般の角に対してはそもそも積分してもあまり意味がない)

■補足

\( \displaystyle\arcsin x={\int }_{0}^{x}\frac{1}{\sqrt{1-{t}^{2}}} dt \) \( \;\;\; |x|\le 1 \)

\( \displaystyle\arccos x={\int }_{x}^{1}\frac{1}{\sqrt{1-{t}^{2}}} dt \) \( \;\;\; |x|\le 1 \)